BLシチュエーション辞典 top

「あれ?やっぱ気付いた?」

男は“予想していた”とでも言うように、どこか楽しそうな顔でヤナギダの問いに答えた。

【RPGパロ小説連載(8)】 天使と悪魔②
「まあまあ。そうカリカリするなって」

そう言いながら、先ほどまでヤナギダが読んでいた本の積んであった机に軽く体重を預けると、
友達の家にでも遊びに来たように、本をパラパラとめくっている。

まるで立場が逆だ―――――。

こちらは今すぐにでも追い出そうと臨戦態勢だというのに、悪魔?は特に何をするでもなく、
殺気どころか悪意も感じさせずに今目の前でニコニコと笑っている。

「……何が目的だ」

いまだ戦う姿勢は崩さずヤナギダが問うと、「ハハッ」とニコやかな顔を更に破顔させて、
「警戒しすぎ」と前置きしたのち、一言こういった。

「散歩」
「……は?」

思わず聞き返してしまう。
目の前のコイツは一体何を言っているのか。

「だから散歩!たまたま歩いてたらなんか面白そうな場所があるなって」
「……バカにしているのか?」

悪魔が散歩?そんなバカな。
より一層眉間に皺を寄せたヤナギダを見てマズイと思ったのか、
初めて焦った風に悪魔?は「違う違う」と手を目の前でぶんぶんと振りながらヤナギダに慌てて説明を始めた。

「いやいや、人間に何かする奴ばっかじゃないってことだよ。
それとも…悪魔とか魔物だったら全員殺しちゃう?
そいつがもしかしたら良い奴かもしれないのに?」

良い奴……?
現在まで「悪魔・魔物=人間の害となる対象」としてしか見てこなかったヤナギダにとってその一言は考えた事どころか頭の隅にさえ無い事だった。

この悪魔は不思議だ。
今まで遭遇してきたどの悪魔よりも友好的だが、どこか遠くにいるような…
そして仮にも司教という立場にいる自分にここまで物が言えるとは。

「貴様は一体……」
「残念。時間切れみたいだ」
「?」

そう目の前の悪魔が言うのと、後ろの茂みがガサガサッと動くのはほぼ同時だった。

「司教様、王立騎士団の方々がいらっしゃいましたが……」

振り向くと、雑用を頼んでいる小間使いが恐る恐ると言った感じでヤナギダに伺いを立てにきている。
それに「分かった」と返事をしているうちに、目の前の悪魔は風のようにいなくなっていた。

つづく

BACK